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建物の登記

建物表題登記と売買契約の契約履行

1. 不動産契約における「履行の着手」の理解

不動産売買契約における特定の状況について考察します。具体的には、新築住宅の購入を前提に金融機関からの融資を受ける予定の買主が存在する状況で、売主が契約の決済前に買主名義で建物の登記を行った場合、これが契約の「履行の着手」に相当するかどうかという問題です。

2. 売主の行為と契約履行の開始

実際に、売主が買主名義で建物表題登記を行うことは、契約履行の開始と考えられているようです。

3. 解約手付金と契約履行の開始

売買契約では、手付金が交換された後でも、買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍額を返すことで、相手方の同意なしに契約を解消できます。これを解約手付金と呼びます。契約の履行が開始されるまでは、このような手続きが可能です。ここでの「契約の履行の開始」とは、債務の履行に取り組み始めることを指します。

4. 判例による解釈:建物表題登記と契約履行の開始

東京地裁のある判決では、新築住宅の売買契約において、売主が契約の履行を開始したかどうかが問題となりました。売主と買主が売買契約を締結し、売主が建物表題登記を完了した後、買主が手付金解除を行ったことから、この建物表題登記が契約履行の開始に該当するかが問題となりました。

5. 裁判所の見解

裁判所は、買主の手付金解除の効力を否定し、建物表題登記は契約履行の開始と認めました。これは、不動産業者が新築建物の分譲販売において、買主名義で建物表題登記を行い、その後所有権保存登記を行う慣習があり、この手続きが契約の履行と見なされたためです。

6. 結論

手付金の返還や放棄についての判断は微妙で、判例が示す基準はあいまいです。具体的な場面で、売主や買主の行動が契約の履行にあたるのかどうかを判断するのは容易ではありません。しかし、この点について、今回紹介した判例が、契約の履行の開始を判断する際の一つの指針として、認知されていると思います。

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