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GNSSの研修をして思ったこと

本日、山下商事さんとトプコンソキアさんのご協力を得てネットワーク型RTK-GNSS測量の研修会をして頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

GNSSというのは、カーナビやスマホの地図でおなじみの、人工衛星からの電波で「いま自分が地球上のどこにいるか」を割り出す仕組みです。私たち土地家屋調査士は、土地の境界を測りますが、精度の桁がまるで違います。スマホの位置が数メートルずれても誰も困りませんが、私たちの仕事では数ミリのずれさえ争いの種になります。GNSS研修をやりつつも、私の頭の片隅では、素朴な疑問が頭を駆け巡っていました。

「結局、同じことじゃないのか」という違和感

土地を測るとき、「世界測地系」という、地球全体で共通の座標を使うやり方と、そうでないやり方があります。世界測地系は、地球上のどの土地も、同じひとつの物差しの上で表されます。
ところが、この共通の物差しには、避けようのない揺らぎがあります。物差しの基準となる点(公共基準点)そのものがわずかに誤差を含んでいるし、衛星を使った測り方には、その瞬間ごとに数センチ単位の細かな揺れがつきまといます。完全にピタリとは止まりません。
一方で、土地の境界というのは、その土地にある古い杭や塀、道路の境界標といった「現地にある目印」との位置関係と密接な関係があります。そして、肝心なことは、この「目印と目印の間の距離」だけなら、世界測地系を使わなくても、ミリ単位でより正確に測ることができます。地球上の絶対的な番地は分からなくても、「この杭からあの杭まで何メートル」といったことはより精密に出せます。
そこで疑問が湧いてきます。揺らぎを抱えた共通の物差しに無理やり乗せてまで世界測地系にこだわることに、いったいどれだけの意味があるのだろう、と。

ネットワーク型RTK-GNSS測量の研修で見えた、精度の「二つの層」

考えてみると、精度には二つの層があることに気づきます。
ひとつは、一筆の土地の形を正確に描くための精度です。これはまさに、現地の杭や塀との位置関係で決まります。隣との境界がどこかを争うとき、問題になるのはこの精度で、塀が杭に対してほんの少し出ているか引っ込んでいるか、といったミリ単位の世界です。世界測地系を使うかどうかは、ここにはほとんど関係がありません。
もうひとつは、バラバラに測られた土地を、一枚の地図につなぎ合わせるための精度です。こちらは、ある土地と隣の土地、さらにその先までを、継ぎ目なく重ね合わせられるかどうかの話になります。別々の人が、別々の日に測った成果を、同じ地図の上で突き合わせられるか。この「つなぎ合わせ」にとって、共通の物差しは絶対に欠かせません。世界測地系の図面をつなぎ合わせれば一つにつながるのです。
でも、大事なことは、この二つは要求される精度の細かさがまるで違うということです。土地をつなぎ合わせる用途には、数センチの揺らぎは十分に小さい。一方、境界の争いに必要なミリ単位の精度は、つなぎ合わせよりも、「現地への取り付け」が関係してきます。共通の物差しの揺らぎは、一筆の土地の形を汚していると考えずに、土地と土地をつなぐという仕事、と考えればしっくりきます。

共通の物差し「皆で使って初めて」価値が出る

では、その「つなぐ」という仕事には、どれほどの意味があるのか。
共通の物差しの価値は、不思議な性質を持っています。電話を世界で一台だけ持っていても、かける相手がいなければ意味がないのと同じで、つながっている土地が少ないうちは、共通の番地のうまみはほとんど現れません。
ところが、ある程度の数の土地が共通の物差しの上に乗ってくると、話が変わります。バラバラだった点が「面」になり、地図として使えるようになります。そうなって初めて、価値が一気に立ち上がります。

「つながった地図」が、社会の土台になる

世界中の土地が、たとえ一枚ごとには数センチの揺らぎを抱えていても、全部が同じ物差しの上で「大雑把につながった一枚の地図」になったとしたら、それは、その上にいろいろなものを乗せられる、社会の土台になります。すべてがつながって面になっているからこそ、物流も、都市計画も、防災も、その上に成り立つことができます。精度の高さよりも、全部がつながっていることのほうが効いてくる用途です。
精密だけれど穴だらけの地図より、多少大雑把でも全部つながった地図のほうが、社会の基盤としては役に立つということなんだろうなと。

ミリを追い込む土地家屋調査士としての矛盾感

結局、世界測地系にこだわって地積測量図を作成するという事は、社会基盤としてのことだと考えが整理着いたのですが、怖いのはそのつながった地図の座標をもって、境界が絶対に正しいと言われがちになることです。「公式の座標」という看板は、実際の確からしさ以上に「正しそう」な印象を与えます。本当はある程度の幅を持った参考の値であるものが、いつのまにか「これが真実の境界だ」と一人歩きしてしまう危うさがあります。
全体をつなぐための地図と、一筆の境界を決める証拠とは、用途の格が違います。この一線さえ取り違えなければ、世界測地系でつながった地図は、精度の問題はありつつも、全部がつながっているからこそ、立派に社会の土台になり得ると思います。

おわりに

一筆の土地の形を正確に描くためだけなら、その意義は薄い。けれど、バラバラの土地を一枚につなぎ、社会が使える土台をつくるためなら、確かに意義があると思います。
でも、つなぐための地図と、境界を決める証拠とを、どう区別していけばいいのか、それが土地家屋調査士としての課題だと思いました。
衛星から届く電波で土地を測るという、考えてみれば途方もない技術。その一台一台の機械がしている仕事の先に、大きな絵がつながっているのだと思うと、明日からの一点一点の観測が、少し違って見える気がします。

当事務所では、最新のGNSS測量技術と長年の経験をもとに、現地に合わせた精密な境界確定を行っております。横浜市での土地の境界や登記に関するご相談は、お気軽に[お問い合わせフォーム]よりご連絡ください。

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