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法務局の地積測量図が、現地と合わない——昭和30年代の古い図面が真実を語った境界確定測量

トータルステーションの側面のクローズアップ。境界確定測量で使用する測量機器

境界確定測量では、法務局に備え付けられた地積測量図を出発点にします。それが実務の原則です。ところが今回の土地は、その原則が通用しませんでした。法務局の図面と現地が、どうしても一致しない。謎を解く鍵は、登記制度が今の形になる前——昭和30年代の一枚の図面にありました。境界確定から地積更正登記まで、実際の経過をご紹介します。

境界確定測量では、こんな資料を突き合わせます

土地の境界を確定するとき、私たち土地家屋調査士は、一つの資料だけを信じることはしません。法務局の地積測量図や公図、道路管理者の持つ道路の資料、建築確認の図面。集められる限りの資料を集め、現地の境界標やブロック塀などの現況と突き合わせながら、境界を検証していきます。

その中でも地積測量図は、登記の際に法務局へ提出された図面ですから、通常はまずこれを正しいものとして検証を始めます。

今回は、その前提が崩れた事例です。

現地と法務局の図面が、まったく一致しない

ご依頼を受けて現地を測量したところ、現地の境界の状況と、法務局に備え付けられた地積測量図が一致しません。多少の誤差という話ではなく、どう重ねても合わないのです。

周辺の土地の地積測量図も取得して確かめました。ところが、どの図面も現実と一致しない。現場は混乱を極めていました。

間違いは、連鎖して蓄積していた

資料を遡って謎を解きほぐしていくと、原因が見えてきました。

発端は、昭和40年代に作成された一枚の地積測量図でした。この図面は、おそらく現地をきちんと反映せず、机上で作成されたものと考えられました。

問題はその後です。この土地に接する形で、周辺の土地が何度も分筆されていったのですが、後から作られた図面はすべて、最初に間違って作られた図面を「正しいもの」として尊重し、それに合わせて作成されていたのです。

一度の間違いが、訂正されないまま次の図面へ、また次の図面へと引き継がれる。結果として、この一帯の地積測量図はどれも現実と一致しないという状況が積み重なっていました。

昭和30年代の一枚の図面が出てきた

行き詰まりかけていたとき、転機がありました。

隣接する土地の所有者の方が、昭和30年代にその土地が分筆されたときの、古い図面を保管されていたのです。土地を購入された際に受け取られたものでした。

この図面を現況と重ねてみると——一致します。

調べると、この図面は当時の大手測量会社が手掛けたものでした。昭和30年代という時代でありながら正確な図面が作成されており、現地を正しく反映していたのです。

土地台帳の時代——公図だけでは分からなかったこと

ここで一つ、制度の歴史の話をさせてください。

昭和30年代は、現在のような登記の制度がまだ確立していませんでした。土地の情報は土地台帳を基に管理されていた時代で、分筆の際の図面が現在のように法務局へ備え付けられる仕組みではありませんでした。ですから、この昭和30年代の分筆図は法務局には残っていません

実際、公図を見るだけでは分筆の経緯は分からず、土地台帳を確認して初めて、昭和30年代に分筆が行われていたことが判明しました。

資料は、それが作られた時代の制度ごと読む必要がある——境界の調査で私たちが大切にしていることの一つです。

「古い図面のほうが正しい」を、どう証明したか

通常であれば、法務局の地積測量図を基準に検証します。今回はその地積測量図が当てにならず、それより前に作られた図面のほうが正しい。この逆転した主張を通すには、確かな裏付けが必要です。

私たちは、対象地の周辺を広範囲に測量しました。一筆の中だけで辻褄を合わせるのではなく、広い範囲で数値の整合性を一つずつ点検していく。その結果、昭和30年代の図面を基準に置いたときにだけ、広域の数値が整合することを確認し、確証を得ました。

法務局の判断——後の図面が否定された

この検証結果をもって、法務局の登記官に相談しました。

結果、後から作られた地積測量図を否定し、昭和30年代の古い図面が正しいという認定を得ることができました。法務局に備え付けられた地積測量図が覆るのは、珍しいことです。広域の測量による裏付けがあったからこその判断だったと考えています。

※これは本件の資料と検証に基づく個別の判断です。同様のケースで常に同じ結論になるとは限りません。

地積更正登記が、周辺の混乱を止める

筆界の確認が完了し、続けて地積更正登記も完了しました。

これが意味することを、少し丁寧に書きます。

地積更正登記によって、私どもが作成した地積測量図が法務局に収められました。この図面は、これまで周辺の混乱のもとになってきた誤った地積測量図を、打ち消す力を持ちます

今後この周辺を測量する人、そして周辺の地権者の方々は、これまで図面同士の食い違いに悩まされてきました。その混乱の正体が、法務局の記録の上で明らかになった。一件の境界確定が、一帯の問題を解く大きな一歩になったのです。

地積更正登記の本当の価値は、面積の数字が直ることではなく、法務局に確かな図面が備わることにあります。その図面は、ご自身の土地だけでなく、周辺の土地の未来の調査をも助けます。

そして何より、依頼者の方も、隣接する所有者の方々も、現に使用されている土地の形のまま境界を確定することができ、大変喜んでいただけました。

この事例が教えてくれること

この案件から得られる教訓を、三つにまとめます。

一つ目。法務局の図面が、いつも正しいとは限りません。地積測量図は原則として信頼すべき資料ですが、作られた経緯によっては現地と食い違うことがあります。図面と現地が合わないとき、「現地が間違っている」と決めつけないことです。

二つ目。資料は、登記制度の歴史ごと読む必要があります。土地台帳の時代、公図の変遷、地積測量図の備え付けの経緯。制度の歴史を知らなければ、今回の昭和30年代の分筆にはたどり着けませんでした。

三つ目。確証は、広域の整合から生まれます。一筆の中だけで検証していたら、どの図面が正しいのか判断できなかったはずです。広く測り、広く突き合わせる。手間はかかりますが、それが揺るがない境界をつくります。

当事務所がお手伝いできること

  • 境界確定測量(資料調査から筆界確認、境界標の設置まで)
  • 地積測量図・公図・土地台帳など資料の調査と読み解き
  • 地積更正登記の申請
  • 図面と現地が一致しない土地についてのご相談

図面と現地が合わない土地は、放置するほど混乱が広がります

境界確定測量のご相談をお受けしています。

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ご注意

  • 記事中の事例は、ご依頼者および関係者が特定されないよう、地域・時期・経緯の細部を一般化しています。
  • 登記官の判断は本件の資料と検証に基づく個別のものであり、同様の結論を保証するものではありません。
  • 境界に関する紛争性のある事柄は弁護士の、権利の登記は司法書士の領域です。当事務所は提携する各専門家と連携してご支援します。
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