2mにあと1センチ足りない旗竿地──図面が1.99mの場合と、現地が1.99mの場合
建築基準法は、敷地が道路に2m以上接していることを求めます。この「2m」に、あと1センチ足りない。それだけの理由で「再建築できない土地」として扱われている土地が、実際にあります。図面が1.99mの場合と、現地が1.99mの場合。同じ1センチでも、解き方はまったく違います。二つの事例をご紹介します。
目次
2mに足りない土地は、ほとんどが旗竿地
建築基準法は、建物の敷地が幅4m以上の道路に2m以上接していることを求めています。この2mを満たせない土地は、原則として建物を建て替えられません。
私たちの経験では、2mが取れないケースのほとんどは旗竿地です。竿の部分、つまり道路から敷地へ通じる細長い通路の幅が、わずかに足りない。
「わずかに」というのが、この問題の厄介なところです。1メートルしかないのなら諦めもつきます。しかし1.99mとなると、話が変わってきます。
1センチは、メジャーでは分からない
ここで先に申し上げておきたいことがあります。
正確に2mあるかどうかは、メジャーで測っただけでは心もとない。巻尺は、たるみ、引っ張り具合、測る位置のわずかなずれで、簡単に1センチ動きます。2mか1.99mかを判断する場面では、この誤差が結論をひっくり返します。
ですから、トータルステーションによる観測が必須です。この1センチは、機械で測って初めて見えてくるものです。
事例A:図面が1.99m、現地は2.00m
昭和50年代に作成された地積測量図で、旗竿部分の幅が1.99mとして登記されていた土地がありました。
ところが現地を観測すると、境界と境界の間はちょうど2.00m確保されています。
現地は足りている。しかし公的な図面が1.99mになっているために、この土地は「再建築できない土地」として扱われてしまう。たった1センチ、しかも図面の上だけの1センチです。
このケースの解決は、比較的はっきりしています。
隣接する土地の所有者の方と境界の確認を行い、正しい測量に基づく地積測量図を法務局に収める。地積更正登記によって、記録を現地に合わせます。それで、この土地にかかっていた制約は解けます。
現地が足りているのに、図面が足りない。この場合は記録を直せば済みます。
事例B:図面が2m、現地は1.99m——こちらが大問題
逆のケースもあります。
地積測量図では旗竿部分が2mとして収められている。一見すると、何の問題もない土地に見えます。
ところが現地を観測すると、実際には1.99mしかありません。
この場合、図面がどうであれ、現実に2mを満たしていないのですから、再建築不可となってしまいます。そして図面が2mになっている分、問題が発見されにくい。気づかないまま売買され、建て替えの段階で判明することもあり得ます。
解決するには、記録ではなく現地の境界そのものを1センチ動かすしかありません。つまり、隣地の所有者の方にご相談し、1センチ分を譲っていただく必要があります。
1ミリでも減ることへの、本能的な抵抗
ここが、この仕事のいちばん難しいところです。
土地の所有者というのは、その大小にかかわらず、1ミリでも自分の土地が減るとなると、本能的に拒絶反応を示される方がほとんどです。
無理もないことだと思います。面積の大小の問題ではなく、「自分の土地が削られる」という感覚そのものへの抵抗だからです。今回の案件でも、相当な抵抗を示されました。
ここで押し込もうとしても、話は前に進みません。別の道を探すことになります。
まず相手方の土地を測る
最初にしたのは、相手方の土地の全体を測量することでした。
目的は、こういうことです。相手方が、登記簿に記載された面積をきちんと確保できているのか。実測面積と登記面積を比べると、どうなっているのか。
この検証は非常に重要です。実測してみると登記簿より広い、ということは珍しくありません。その事実が分かれば、話の前提が変わります。逆に、相手方も足りていないと分かることもあります。いずれにせよ、推測ではなく数字で状況を共有できるようになります。
1センチをもらい、1センチを返す
この案件で採った解決は、こうです。
相手方から1センチを譲っていただく代わりに、こちら側の別の部分を1センチ分筆して、相手方にお譲りする。
減った分を、別の場所で返す。こうすることで、相手方の土地の面積は確保されます。「削られる」のではなく「位置が変わる」形になります。
この考え方によって、話が動きました。
ブロック塀は、どうするのか
ただ、机上で考えるのは簡単でも、実際にやるとなると別の問題が出てきます。
境界の位置を動かすと、既存のブロック塀と新しい境界の位置がずれます。
塀を境界線に沿って作り直すのか。それとも、塀の位置と境界が異なることを覚書で相互に確認し合うのか。どちらを選ぶかは、費用の問題でもあり、双方のお気持ちの問題でもあります。ここも丁寧にご相談していく部分です。
税と登記と契約——一人では終わらない
さらに、土地を譲り合うという行為には、いくつもの専門領域が絡みます。
- 税:土地の譲渡には、不動産の譲渡所得税の問題が生じ得ます。課税が生じない要件を満たせるかどうか、税理士を交えた検証が必要になります
- 登記:分筆をしたうえで所有権の移転登記が必要になりますので、司法書士との打ち合わせが要ります
- 契約:土地の譲渡にあたっては、契約書の手配のため宅地建物取引業者のお力を借りる場合もあります
これらを、依頼者の方をお待たせすることなく、迷いなく段取りしていく。当事務所は、提携する各分野の専門家と連携しながら、この全体の設計と調整を担っています。
測量して図面を出すだけなら、ここまでは必要ありません。しかし、それでは1センチの問題は解けないのです。
この事例が教えてくれること
一つ目。「再建築不可」は、確定した事実とは限りません。図面が1.99mでも、現地が2mあれば記録を直せます。まず、どちらが足りていないのかを正確に把握することです。
二つ目。図面が2mでも安心はできません。むしろ現地が足りていないケースのほうが厄介です。図面が整っている分、発見が遅れます。
三つ目。減ることへの抵抗は、面積の大小の問題ではありません。だからこそ、面積を別の場所で確保するという解き方が生きてきます。押すのではなく、成り立つ形を設計することです。
当事務所がお手伝いできること
- トータルステーションによる精密な観測と、接道幅の確認
- 境界確定測量、地積更正登記
- 土地の一部を譲り合う場合の分筆登記と、全体の段取りの設計
- 税理士・司法書士・宅地建物取引業者との連携によるワンストップのご支援
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ご注意
- 記事中の事例は、関係する方々が特定されないよう、経緯の細部を一般化しています。
- 接道の可否や再建築の可否を最終的に判断するのは特定行政庁です。本記事は結果を保証するものではありません。
- 譲渡に伴う課税の取扱いは個別の事情によります。必ず税理士にご確認ください。
- 権利の登記は司法書士、売買契約は宅地建物取引業者、紛争性のある事柄は弁護士の領域です。提携する各専門家と連携してご支援します。
